2011/03/03

いつか私があなたの家の玄関にやってきて、あなたの隣人として、嬉しそうに握手を求めてくる、そんな日がくることだってあるだから。

▼ムハマド・ミン・リビア 「民衆革命でリビアはひとつになっているのだから、
介入しないでほしい」
(「ガーディアン」2011年3月1日)
私たちは飛行禁止空域を歓迎するが、
私たちの蜂起に西側諸国がまちがった介入をすれば、
死んでいったリビアの人たちの血が
無駄になってしまう。

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「僕のかわりに、母さんにさよならのキスをしてあげて、そして、母さんに伝えほしいんだ、あなたの息子は英雄として死んだんだよって」。僕の友人アフメト(26)がトリポリの路上で撃たれたとき、彼のもとに駆け寄った人にそう言ったという。

その二日後、僕の友人アフメトは病院で亡くなった。まさに彼が言ったように。背が高くてハンサムで、おもしろくて機知と知性に富んだこの若者は、もういない。もう二度と僕の電話に応えることもない。彼のフェィスブックのアカウントの上で時間は永遠に静止したままだ。

彼が撃たれる一時間ほど前、僕は彼に電話をした。彼は意気盛んだった。トリポリ中心部のグリーン・スクエアにいること、そして今、自分たちは自由なんだ、と彼は語っていた。それからすぐ電話回線の調子が悪くなり、それから二日間、連絡が途絶えた。

アフメトの親友が、悲報を僕に伝えてくれたのは、彼に電話をかけた時だった。「いまからみんなでアフメトを埋葬するんだ」と彼は言った。僕は墓地に駆けつけたが、着いたのは埋葬が終わった直後だった。そこで何人かの友人たちに会った。彼らは地面のある場所を指差して、そこにアフメトが眠っていると言った。僕らはたがいに抱き合って、胸が張り裂けんばかりに泣いた。

ここ数日のトリポリで聞くことのできる話は、ほとんどがこのような話で、あなたが今いる場所では、とても想像できないような話だと思う。

たとえば、生後6ヶ月の子どもが殺されたという話を聞いたら、きっとあなたは、サイーフ・アルイスラム・カダフィが主張する「暴力行為など少しも起こっておらず、すべてアルジャジーラの作り話だ」という話が本当だったらどんなにいいだろうと思うはずだ、そして、いま、この子が母の腕に抱かれ、すやすやと眠っていてくれることを心の底から願うはずだ。また、タジュラ出身の男性が撃たれて、頭に弾丸が入ったまま二日間生きながらえ、妻と子供を残して死んだという話を聞いたら、どうかこの父親が無事で、子どもと遊んでいる様子を願い、神に祈り続けるはずだ。しかし写真とビデオ映像が冷酷な事実を突きつけてくる。愛する者たちが死によって連れ去られることを嘆き悲しむ声に翻訳はいらない。人間なら誰でもその叫び声の意味を知っているからだ。

これがトリポリの今の生活だ。そしてこれが、催涙ガスから逃れる抗議者たちを目のあたりにして絶望感を感じている住民たちが、トリポリを「シティ・オブ・ゴースト」と呼んでいる理由でもある。街の機能は停止したままで、ほとんどの商店が開いておらず、学校や大学も閉まっている。生活必需品を売る店がいくつか営業しているが、それも二日おきに数時間だけというありさまだ。しかし、このような荒涼とした環境の中であってさえも、トリポリの人びとは、いま、自分たちはカダフィの支配体制の最後の瞬間を目撃しつつあるのだという希望と信念を持ち続けている。あの男はもはやリビアを統治などしていない、彼は人びとに銃を向けるだけの者に過ぎない。

カダフィの二回の演説とその前の彼の息子の演説は脅迫以外のなにものでもなかった。そしてそのような脅迫は、リビア革命を支持する者に対して、全部裏目に出ただけだった。西部や東部のリビアの部族の人びとは、国民的団結を訴えるために出てきたのだ。イスラム主義による統治という脅しをかけることでカダフィは、西欧諸国を脅迫することを目論んだが、それに対して国際社会は、前例のない国際的合意のもとで、海外渡航の禁止、資産の凍結、彼の体制が犯した犯罪を、国際司法裁判所へ付託することを発表した。

すべてのリビア人たち、そしていまや少数派であるカダフィ支持者たちでさえも、リビアが再び自由を手にするのは、もはや時間の問題だと考えている。とはいえ、ぞっとするような問いが依然として残っている。すなわち、カダフィが倒れる前に、あとどれだけの数の殉教者たちが命を落とすことになるのだろうか?この災いの元凶が崩れ去る前に、どれだけの数の魂をカダフィは奪っていくのか?というのがそれだ。

そして、すべてのリビア人たちが共に抱いているひとつの懸念がある。それは西欧諸国の軍隊がこの危機を終息させるために介入してくることで、体制の崩壊という幸福な結末が台無しにされてしまうという懸念である。

でも、どうか誤解しないでほしい、多くのリビア人たちと同様に私も、飛行禁止空域を課すことは、あらゆるレベルで体制に打撃を与える有効な手段だと思っている。それはアフリカから召集された傭兵たちを運ぶルートを遮断し、カダフィが金や資産をこっそり持ち出す事を防いでくれる。そして最も重要な点として、彼の体制が兵器庫に火をつけることを阻止する。そこにはさまざまな化学兵器があり、そのなかには想像を絶するほどの破壊を引き起こす兵器も保管されているという多くの目撃者たちの証言もある。カダフィの爆撃機にそうした兵器が実装されてる可能性があることは云うまでもない。

とはいえ、どの地域のリビア人たちのなかにも、ひとつのまとまった見解があるように思える。それは元・司法大臣で、ベンガジ暫定政府の長であるムスタファ・アブドゥ・アル・ジェレルが述べたように、外国の部隊による軍事介入が地上に展開された場合、それはカダフィの傭兵たちが引き起こしているものよりもさらに悲惨な争いをもたらすだろうということだ。

特定の標的に対する限定的な空爆もあり得るということにも私は賛同できない。これはどこをどうとってみても、民衆の革命であり、その力の源はリビアの人びとの血からきている。西欧諸国がリビアにおける権益の損失をおそれ、無視し続けてきた、この革命のはじまりの時からずっと、リビアの人びとは自力で戦ってきた。この革命が、それをはじめた人たち、すなわちリビアの民衆によって最後までなしとげられるべきだという理由はそれである。

諸外国の介入を求める声が高まりつつあるいま、西欧諸国のリーダーである、オバマ、キャメロン、サルコジたちにメッセージを送ろうと思う。

これは、あなたたちの足もとに転がりこんできた、貴重すぎて値段がつけられないくらいのチャンスなのだ。これはあなたたちにとって、あなたの目に映っているアラブ人やイスラム教徒へのイメージを改めるまととないチャンスなのだ。そのチャンスを台無しにしないでほしい。あなたたちがこれまで行ってきた東側の世界と西側の世界を結びつけようとする計画はすべて失敗し、そのいくつかは事態をより悪化させている。ちゃんと始末をつけることができないことに、手をだしてはいけない。この純潔なる民衆たちの革命を、あらゆる者たちの身にふりかかる災いに変えてはいけない。そして、私の友人アフメトが流してくれた血をどうか無駄にさせないでほしい。

この同じ惑星に生きる隣人として、どうか生きさせてほしい。いつか私があなたの家の玄関にやってきて、あなたの隣人として、嬉しそうに握手を求めてくる、そんな日がくることだってあるだから。

簡訳=PROS (江上賢一郎+イルコモンズ)

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